韓国のファッション通販アプリを運営するABLYは、化粧品の先行発売によって新規顧客の獲得と取引額の拡大に成功したと2026年7月22日に発表しました。対象となった3ブランドはいずれも取引額を大きく伸ばし、なかには前月同期比で49倍以上という数字を記録した例もあります。ここでは発表の詳細と、なぜここまでの効果が出たのかを事例ごとに整理します。
ファッション通販業界では、化粧品の品ぞろえを他サイトと差別化するための施策が広がっています。独占商品の発掘や、新商品を一定期間早く発売する先行発売という販売戦略もその一つで、ABLYはこの分野で存在感を強めてきました。今回の発表は、先行発売が話題作りにとどまらず、実際の取引額拡大や新規顧客獲得に直結していることを具体的な数字とともに示すものになりました。

ABLYは化粧品の先行発売で取引額を最大49倍に伸ばした
ABLYは韓国発のファッション通販アプリで、総ダウンロード数1,600万を記録する韓国最大級の女性ファッションECアプリです。多数のブランドが出店する集合型のオンラインモールで、プチプラのシンプルな洋服からトレンド性の高いアイテムまで幅広く扱っています。カスタマーレビューや購入者による商品写真を確認できる仕組みがあり、利用者は自分で商品の質を見極めながら購入を決められます。
ABLYの利用者の中心は韓国のZ世代とアルファ世代です。トレンド感度の高さと手頃な価格帯が支持されており、この若年層への強いリーチ力が、今回の化粧品の先行発売施策による効果を押し上げた要因になっています。ABLYは日本市場向けにも「Pastel(パステル)」というサービスを展開しており、日本のZ世代女性をターゲットにした事業も進めています。
ABLYの関係者は今回の発表で、先行発売によってブランドの取引額が増えただけでなく、実際に新規顧客の流入にもつながっていると述べました。美容ブランドが新商品を発表する際に最初に選ぶ先行発売拠点として、顧客層拡大への支援をさらに強化する方針も示しています。発表では、具体的な事例として3つの化粧品ブランドが紹介されました。
JAVIN DE SEOULの新色は前月比49倍・新規顧客92%を記録
化粧品ブランドJAVIN DE SEOULは2026年4月、人気インフルエンサーと共同開発した新商品「ウィンク・ファンデーション・パクト17号」をABLYで独占先行発売しました。
JAVIN DE SEOULは韓国のスキンケア・メイクアップブランドです。看板商品のウィンクファンデーションパクトは、ウインクしたようなデザインのパッケージが特徴のクッションファンデーションで、SPF50+・PA+++の紫外線防御力を備えながら、セミマット寄りでほのかなツヤ感のある仕上がりになります。毛穴やクマをコンシーラーなしでカバーできる力と、崩れにくい密着感が支持されている商品です。ヒアルロン酸ナトリウムやアロエベラ葉エキスといった保湿成分も配合されており、韓国の大手コスメセレクトショップOlive Youngでもベストセラーになっているそうです。
この実績ある商品の新色をABLYで独占先行発売した効果は際立っていました。販売促進期間中、ABLYにおけるJAVIN DE SEOULの取引額は前月同期比で49倍以上に伸び、同ブランドが出店して以来の最高月間取引額を更新しています。さらに購入者の92%以上が同ブランドを初めて購入する利用者だったとのことです。この数字は、先行発売が既存顧客のリピート購入を促すだけでなく、まったく新しい顧客層との接点を広げる施策であることを示しています。広告費をかけて新規顧客を集めるより、ずっと効率のよい形で新しい出会いを作れたことになります。
espoirの新色は取引額400%増・ブランド全体も59%増加
韓国コスメ大手アモーレパシフィックが展開するメイクアップブランドespoirは2026年5月、人気商品「ビーベルベット・カバークッション」の新色「21Pピーチアイボリー」をABLYで独占先行発売しました。
espoirはアモーレパシフィックグループが手掛けるプロフェッショナルメイクアップブランドです。ビーベルベット・カバークッションはそのシリーズを代表するクッションファンデーションの一つで、肌に密着するベルベットのような柔らかいマット質感が特徴になります。毛穴や肌悩みをカバーしながら、パウダリーな仕上がりが崩れにくい設計です。同シリーズには皮脂吸着に優れたビーベルベット・セバムカットクッションなどの派生商品もあり、espoirはクッションファンデーションのラインナップを継続的に強化しています。
この看板商品の新色をABLYで独占先行発売した結果、発売記念イベント期間中、同シリーズの取引額は前月同期比で400%増加しました。新色単体の伸びにとどまらず、ABLYにおけるespoirブランド全体の取引額も59%増加しています。一つの新色の先行発売が、ブランド全体の売上を底上げする波及効果を生んだことになります。購入者のうち新規顧客の割合は66%に達しており、すでに知名度のある大手ブランドでも、先行発売を通じてなお新規顧客を大きく開拓できることを示す例といえるでしょう。
periperaは新規顧客の71%を10〜20代が占めた
韓国発のメイクアップブランドperiperaは2026年4月末、新商品「ムード・グロウイ・ティント・キー」を独占先行発売しました。
periperaは、ペルシャ神話の妖精を意味するPeriと、ペリの魔法の巾着を意味するPeraを組み合わせたブランド名を持ち、手頃な価格帯とトレンド感のあるデザインを両立させることをコンセプトにしています。人気シリーズのムード・グロウイ・ティントはジューシーな質感とクリアな発色が特徴のリップティントで、韓国アイドルのステージメイクにも使われることがある商品ラインです。今回先行発売されたムード・グロウイ・ティント・キーは、鍵をモチーフにしたデザインを取り入れ、アクセサリー感覚で楽しめる仕様になっている点が話題になりました。
この新商品の販売促進期間中、periperaの取引額は前月同期比で45%増加しました。同期間にABLYでperiperaを購入した顧客のうち、半数以上が同ブランドを初めて利用する顧客だったとのことです。さらに注目すべきは年齢層のデータで、新規顧客のうち10〜20代が71%を占めていました。10〜20代は将来の主要な美容消費層になるとされる世代で、periperaはこの若年層への浸透を先行発売施策を通じて大きく前進させたことになります。
3ブランドの実績を比較すると新規顧客獲得の効率の高さが際立つ
ここまで紹介した3つの事例は、商品カテゴリーや価格帯、ブランドの知名度がそれぞれ異なりますが、共通して取引額の急増と新規顧客比率の高さが確認できます。
| ブランド | 商品 | 取引額の伸び | 新規顧客の割合 |
|---|---|---|---|
| JAVIN DE SEOUL | ウィンク・ファンデーション・パクト17号 | 前月比49倍以上 | 92%以上 |
| espoir | ビーベルベット・カバークッション新色 | 新色シリーズ400%増、ブランド全体59%増 | 66% |
| peripera | ムード・グロウイ・ティント・キー | 前月比45%増 | 半数以上(うち10〜20代が71%) |
取引額の増加幅にはかなり差がありますが、これはブランドの既存の知名度や商品カテゴリーの違いによるものと考えられます。ベースメイクとリップメイクでは購買頻度や単価が異なるため、単純に数字だけで優劣を比べるのは難しい面もあります。それでも、いずれのケースでも先行発売という施策そのものが強力なきっかけになっていることは共通しています。通常のマーケティング施策では新規顧客の獲得コストは既存顧客への再アプローチより高くつくとされますが、ここでしか買えないという限定性を伴う先行発売は、新規顧客の獲得効率を大きく高める効果を持つことが、この3事例から裏付けられます。
Z世代とアルファ世代への訴求力がABLYの強みになっている
先行発売がここまでの効果を生んだ背景には、Z世代とアルファ世代に特有の消費行動が関わっていると考えられます。この世代はSNSやショート動画を通じて情報を得ることに慣れており、他の人より早く新商品を手に入れることや、限定的な体験を共有することに価値を見出す傾向があります。ABLY上で独占先行発売と銘打たれた商品は、単なる新商品以上の特別感を帯び、SNSでのシェアや口コミを誘発しやすくなります。
ABLYはカスタマーレビューや購入者の商品写真を確認できる仕組みも備えています。初めて接するブランドの商品でも、他の購入者のリアルな評価を参考に安心して購入を決められる環境が整っているわけです。先行発売という新しさと、レビューという信頼性の担保が両立していることが、新規顧客の購入ハードルを下げる要因になっていると考えられます。ファッション通販アプリの利用者はもともとトレンドをいち早く取り入れたい意識が高い層で、ファッションとコスメを同じプラットフォーム上で横断的に購入できる利便性も、先行発売施策の効果を押し上げる一因になっているでしょう。
韓国ファッションEC業界全体で先行発売モデルが広がっている
先行発売によって化粧品カテゴリーを強化する動きは、ABLYだけの現象ではありません。韓国発の大手ファッション通販プラットフォームMUSINSAも、ビューティー部門で同様の戦略を積極的に展開しています。MUSINSAのグローバルストアにおけるビューティー部門の取引額は、上半期だけで前年比361%増にまで拡大しており、2024年1月から5月の間だけでも先行発売・独占商品の数が100品目を超えたと報じられています。バニラコやJongsungmul、Estelaといった人気ブランドがMUSINSA Beautyを新商品のお披露目の場として活用しているとされ、登録会員数1,500万人超のうち半数以上が10〜20代であるという構造も、ABLYの事例と共通する部分が多いといえます。
つまりABLYとMUSINSAという韓国の二大ファッション通販プラットフォームが、いずれも化粧品の先行発売・独占発売を軸にビューティーカテゴリーを強化するという、業界レベルで共通した戦略トレンドがあることになります。今回のABLYの発表は一過性の成功事例ではなく、韓国ファッションEC業界を貫く構造的な潮流の一部と捉えられます。
こうした戦略が広がる背景には、韓国のEC市場そのものの規模もあります。韓国は人口5,100万人という規模に対してEC普及率が非常に高く、多数のプラットフォームが競合するなかで、いかに他サイトにない独自の商品体験を提供できるかが差別化の鍵になっています。化粧品というカテゴリーは、アパレルと比べても新商品のサイクルが早く、SNSでのバズや口コミによって人気が急速に広がりやすいという特徴もあります。どこよりも早く手に入るという先行発売の訴求力は、こうした業界特性のなかでほかの商品カテゴリー以上に強く働きやすいといえるでしょう。
この背景には、韓国の化粧品輸出額の伸びもあります。韓国の化粧品輸出額は2026年第1四半期に31億ドルに達し、過去最高を更新しました。前年同期比で19%増、3月単月では約29%増というペースで伸びており、このペースが続けば年換算でおよそ1.8兆円規模に達する見込みだといいます。消費者の間ではPDRNやグルタチオン、ビタミンC、レチノール、バクチオールといった特定成分を前面に打ち出した製品への関心が高まっており、若年層を中心にグミやゼリー型の食べる化粧品のような商品も伸びています。K-beautyはスキンケアやシートマスク、メイクアップといったカテゴリーで、機能性とトレンド性、手頃な価格という組み合わせを武器に若年層からの支持を広げており、こうした業界全体の勢いが、ABLYの先行発売施策の効果をさらに後押ししたと捉えることができます。
espoirを展開するアモーレパシフィックの厚みが先行発売の説得力を支えている
今回の事例のうちespoirを展開するアモーレパシフィックは、創業77年の歴史を持つ韓国ビューティー業界のリーディングカンパニーです。innisfreeやLANEIGE、ETUDE、HERA、IOPEなど、日本でも知られる多数のブランドを傘下に抱える韓国最大手の化粧品グループの一角で、espoirはそのなかでもメイクアップに特化したプロフェッショナル路線のブランドという位置づけになります。
espoirという名称はフランス語で希望を意味します。もともとは香水を中心としたブランドでしたが、2010年10月にメイクアップもファッションの一部であるというコンセプトのもとリニューアルされ、スタイリッシュで洗練されたメイクアップアイテムを展開するブランドに生まれ変わりました。プロのメイクアップアーティストの技術やノウハウを反映した商品づくりが特徴で、韓国の有名モデルやメイクアップアーティストからも支持を集めています。20代から30代の女性を中心に人気のあるブランドであり、単なる新興ブランドではなく、業界内での評価と実績を兼ね備えたブランドである点は、今回の成果を見るうえでも重要なポイントです。すでに一定の完成度とブランド力を持つespoirのようなブランドでも、独占先行発売によって取引額が前月同期比400%増、新規顧客比率66%という成果を出せたという事実は、先行発売が新興ブランドの認知拡大策にとどまらず、確立されたブランドの新たな顧客層開拓策としても機能することを示しています。
先行発売の効果は希少性とスノッブ効果の心理で説明できる
先行発売や独占発売がここまで高い効果を発揮する理由は、マーケティング心理学の観点からも説明できます。まず基本にあるのが希少性の原則です。期間限定やここでしか買えないという情報は、消費者に今買わなければ手に入らないかもしれないという心理的な焦りを生じさせ、購買の意思決定を後押しします。
さらに、多くの人が持っていない特別な商品を手に入れたいというスノッブ効果も働きます。SNS世代であるZ世代とアルファ世代にとって、誰よりも早く新商品を手に入れたという体験は、単なる商品の所有以上に、SNS上でシェアする価値のある情報としての意味を持ちます。この結果、先行発売商品の購入体験そのものが口コミやSNS投稿を通じて広がり、プラットフォームやブランドの認知拡大に二次的に貢献する好循環が生まれやすくなります。期間や数量に制限を設けることで生まれる緊急性も、購入の後押しとして働きます。こうした心理効果が重なることで、先行発売は通常の新商品発売よりはるかに強い購買喚起力を持つことになります。今回のABLYの事例における取引額の急増や高い新規顧客比率は、こうした消費者心理のメカニズムが、韓国の美容意識の高いZ世代・アルファ世代という土壌の上で発揮された結果と解釈できます。
ABLYは先行発売拠点としての地位確立をさらに強化する方針
ABLYの関係者は今回の発表で、美容ブランドが新商品を発表する際に最初に選ぶ先行発売拠点として、顧客層の拡大に向けた支援をさらに強化すると述べています。一過性の成功事例を発表するだけでなく、今後も継続的に化粧品ブランドの先行発売パートナーとしての地位を確立していく方針が読み取れます。
化粧品ブランド側から見ると、ABLYでの先行発売は単なる販売チャネルの一つという位置づけを超えて、新規顧客開拓とブランド認知拡大を同時に狙えるマーケティング施策としての価値を持つようになっています。今回紹介された3ブランドはいずれも、先行発売によって短期間で大きな新規顧客層を獲得できており、今後も同様の施策を採用するブランドは増えていくと見られます。
ABLYがこのような形で化粧品カテゴリーへの投資を強化する背景には、ファッションと美容の消費行動が結びついているZ世代・アルファ世代という顧客基盤を活かそうとする姿勢があります。ABLYは日本向けサービスPastelを通じた越境展開も進めており、同様の先行発売モデルが他国の市場でどう応用されていくのかも気になるところです。韓国発のトレンドが日本を含む周辺市場にどう波及していくか、この分野の動きは今後も注目されるテーマといえるでしょう。化粧品を選ぶ際に「新色をいち早く試したい」と考える読者にとっても、こうしたプラットフォームの動向は商品選びの参考になりそうですし、今後どのブランドが先行発売の場としてABLYを選ぶのかも気になるところです。









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