ユニクロがソックスの値上げを撤回した理由は「生活必需品の象徴」

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ユニクロがソックスの値上げを撤回した理由は「生活必需品の象徴」

ユニクロは2026年10月27日、「50色ソックス」の値上げを中止し、「ソックスまとめ買い」も終わらせずに続けると発表しました。撤回の理由としてユニクロが挙げたのは、靴下が生活必需品を象徴する商品だという点です。さらに検討した結果、価格を据え置き、まとめ買いも残す判断に至ったと説明しています。50色ソックスは税込290円のままで、3点や4点で990円になる売り方もこれまでどおりです。

告知が出たのは10月16日で、1足100円の値上げとまとめ買いの廃止が同時に予定されていました。実施日だった11月10日まで約2週間を残し、告知から約11日間で方針を改めました。ファーストリテイリングの広報は、案内したあとに内容を変えて混乱を招いたとして、利用者を含む関係者におわびを述べました。

撤回されたのは、靴下に関する2つの変更だけです。感動ジャケットや感動パンツなど、ほかの商品の値上げは11月10日に予定どおり行われます。

ユニクロの売り場でカラフルな50色ソックスを選ぶ男性
目次

撤回の理由は「靴下は生活必需品の象徴的な商品」という判断

ユニクロがソックスの値上げを撤回した理由、靴下は店の価格イメージを決めるKVI

ユニクロが公表した撤回の理由は、靴下を生活必需品の象徴的な商品と位置づけたことです。「さらなる検討を行った結果」という言葉も添えていて、10月16日に値上げを告知した時点の判断を、会社自身が見直したと認めた格好です。

靴下は、衣料品のなかでも消耗品の色合いが濃い商品です。毎日履いてすり減りやすく、買い替える回数も多くなります。1足ごとの値上げ幅は100円でも、買う回数が多いぶん、価格の変化を利用者が身近に感じやすいのです。

小売業のKVIの考え方に沿ったソックスの価格据え置き

小売業で使われるKVI(キーバリューアイテム)とは、消費者が「この店は安いか、高いか」を見極めるときの物差しになる、象徴的な商品のことです。衣料品なら靴下やTシャツ、食品ならバナナ、家電なら電池がその代表です。

KVIを手頃な値段に保てていれば、店はほかの商品の値付けにいくらか余裕を持てます。反対にKVIが高いと、売り場全体が割高に見えてしまいます。海外の調査では、店の価格イメージのおよそ3分の1を、全商品のうち2.5%にすぎない商品がつくっているという結果が出ました。

ユニクロが示した撤回の理由は、この考え方と一致します。

撤回されなければ50色ソックス4足は990円から1560円になっていた

50色ソックス4足の支払い、撤回後の990円と撤回されなかった場合の1560円の比較

10月16日の告知どおりに進めば、50色ソックスは11月10日に税込290円から390円へ上がり、まとめ買いの割引もなくなる予定でした。2つが同時に実施されると、50色ソックスを4足そろえる人の支払いは990円から1560円に増え、負担はおよそ1.6倍に膨らむ計算でした。

3点990円と4点990円のまとめ買いは継続

存続が決まったまとめ買いでは、対象のソックスを3点選ぶと支払いが合計990円で済みます。50色ソックスに限っては「カラーソックスまとめ買い」という枠もあり、こちらは4点選んで990円です。50色ソックスを4点990円で買えば、単品の290円で買うより1足あたりが安くなります。

廃止されていた場合、対象のソックスはすべて1点ずつの値段で売られる予定でした。3点990円の枠で買っていた3足を1足390円で換算すると、1170円になります。

50色ソックスは色の多さが評価されている商品

ユニクロの公式サイトには、「50色ソックス」という名前で商品ページが設けられています。サイト上の分類はスポーツショートソックスとパイルで、利用者のレビューでは色の選択肢の多さに好意的な評価が集まっています。

無印良品も靴下3足990円で販売し、1足あたりの価格はユニクロと近い

靴下を何足かまとめると安くなる売り方は、ユニクロだけのものではありません。無印良品は公式ページで、「足なり直角靴下」などの定番品を3足選ぶと990円になる販売を案内しています。

対象は1足330円と390円の靴下で、3足単位で買うと割引になります。組み合わせは自由に選べ、子ども用と大人用を混ぜても構いません。1足990円の商品と、もともと4足組で990円の靴下は対象外です。

商品単品の価格まとめ買いでの1足あたり
ユニクロ「50色ソックス」税込290円247.5円(4点990円)
無印良品のまとめ買い対象靴下330円または390円330円(3足990円)

ソックス以外の値上げは11月10日に予定どおり、感動パンツは約25%高

11月10日からの価格、感動ジャケットと感動パンツは値上げ、50色ソックスは290円に据え置き

10月16日の告知では、2026年秋冬の商品全体の平均販売価格を約4%上げるとし、値上げする商品を11に絞っていました。対象を少数に限ったため、個々の商品の上げ幅は全体平均の4%を大きく超えています。主な商品の改定幅は次の表のとおりです。

商品改定前(税込)11月10日以降(税込)上げ幅
感動ジャケット6990円7990円1000円(約14%)
感動パンツ、感動スリムパンツ3990円4990円約25%

ユニクロは値上げに踏み切る理由として、原材料費と物流費の上昇、そして長引く円安を挙げています。

感動ジャケットの1000円値上げは2023年春夏に続き2度目

感動ジャケットは2020年5月にECで発売され、当時の価格は5990円でした。2022年12月に発表された2023年春夏の改定で6990円になり、このときは感動ジャケットを含む複数の商品が、それぞれ1000円ずつ上がりました。今回の7990円への改定で、同じ1000円幅の値上げが2回続くことになります。

ジャケットの素材は感動パンツと同じポリエステルで、上下で合わせるとビジネスの場にも向くとされています。感動パンツは2015年ごろに登場したユニクロの定番で、2025年3月には発売から10年を祝う発表会が開かれました。素材は東レと共同で開発したもので、軽くて伸びやすく、乾きやすいポリエステルが中心で、家で洗えることも特徴です。糸は伸び方の違う2種類のポリマーをらせん状に合わせたもので、生地は15%伸び縮みすると紹介されています。

9月にはキッズとウィメンズのパンツを先に改定

11月10日より前に、9月の時点で一部の商品はすでに価格が上がっています。「ウォームイージーパンツ」(キッズ)が1990円から2490円へ、「ウルトラストレッチレギンスパンツ」(ウィメンズ)が2990円から3990円へと改められました。この改定でもユニクロは原材料費や物流費の高騰と円安を理由に挙げ、同時にサービス料金の見直しも発表しています。

値上げは7月の決算で「全商品ならして4%弱」と予告されていた

秋冬の値上げは、10月に突然決まったものではありません。2026年7月9日の決算発表で、ファーストリテイリングはすでに方針を示していました。

この日、同社は2026年8月期の連結純利益の予想を4800億円から5000億円に引き上げています。この期で3回目の上方修正でした。同じ場で岡崎健取締役は、円安が一段と厳しさを増していると述べました。そのうえで、2026年秋冬は「ごく一部の商品」に限って値上げし、全商品で平均すると上げ幅は4%弱になる、という見通しも語っています。10月の告知内容は、この見通しに沿ったものでした。

あわせて同社は、6月から8月の第4四半期について、国内ユニクロ事業がわずかに減収となり、事業利益は2桁の減益になるとの見通しも出していました。

カシミヤクルーネックセーターは9990円から1万900円へ

7月の決算発表のあとには、秋冬商品の価格も一部が判明していました。2025年秋冬に9990円で売られていたカシミヤのクルーネックセーターは1万900円になり、約1000円高くなります。タートルネックは従来の価格のまま据え置かれました。

2026年10月もドル円は158円台で、円安が続いていた

値上げの理由に挙がった円安は、10月に入っても続いていました。ドル円は10月2日に158円台前半、10月13日に158円台半ばで推移しました。大和総研は、2026年9月初めに1ドル160円程度だった相場がその後は円高方向へ動いたものの、水準としてはまだ円安の局面にあるとしています。

円の実力を測る実質実効為替レートも、2026年7月に1970年1月以降で最も低い水準を記録しました。実質実効為替レートとは、主な貿易相手国の通貨に対して円がどれだけの価値を持つかを、物価の動きを取り除いて総合的に表した指標です。数値が高いほど円で海外のものを買う力が強いことを意味し、日本銀行が2010年を100とする指数で公表しています。

為替予約のレートが円安だと衣料品の原価が上がる

衣料品は輸入への依存度が高い商品です。仕入れに使う為替予約のレートが円安の水準で決まっていると、そのぶん原価が膨らみます。

為替予約とは、将来の取引で使う為替レートを、銀行とのあいだで前もって決めておく取引のことです。たとえば1ドル150円で予約すれば、そのあと円安が進んでも150円で決済できます。為替の変動による損失を抑えられるのが、いちばんの長所です。逆に予約より円高になった場合は、予約しなければ手にできた利益を逃すことになります。

輸入の多い小売業では、円安になると、同じドル建ての商品でも円で払う金額が増え、仕入れ値が上がります。東京都の調査で、輸入取引の多い小売業の47.0%が、為替の変動で収益がいちばん悪くなる場面として「円安」を選んでいます。

2026年8月期の国内ユニクロは過去最高益、ただし6〜8月は4.0%減収

ファーストリテイリングが2026年10月8日に発表した2026年8月期決算で、国内ユニクロ事業は売上も利益も過去最高を更新しました。通期の売上収益は1兆848億円で前期より5.7%多く、事業利益は1960億円で8.1%増えています。既存店売上高は5.1%のプラスでした。EC売上高は6.3%増の1620億円で、EC化率は15.0%に達しています。

足を引っ張ったのは夏です。6月から8月の国内売上収益は、前年同期を4.0%下回りました。6月と8月は前年より気温が低く、台風や豪雨も重なって、夏物が思うように売れませんでした。決算期が明けた9月は、気温が下がって秋冬物がよく売れ、国内ユニクロの9月単月の売上は、1年前の9月を10.8%上回りました。

連結では、売上収益が3兆9634億円で16.6%増、営業利益が7431億円で31.7%増と、ともに過去最高でした。年間配当も、前の期の500円から850円へ増やしています。

事業利益と営業利益は定義の異なる別の指標

事業利益とは、本業のもうけを示す指標です。計算では、売上収益から売上原価を引き、さらに販売費及び一般管理費を引きます。国際会計基準(IFRS)には、日本の会計基準のような営業利益や経常利益の区分がそのままの形では設けられていません。そのため独自の利益指標を出す企業があり、事業利益もその一つです。

名前が似ていても中身は企業ごとに違うので、会社をまたいで単純に比べるときは注意が必要です。どちらの指標を使うかで、同じ決算でも見える数字が変わります。2026年8月期の連結でも、事業利益は7184億円で、営業利益の数字とは一致しません。

2027年8月期は売上収益4兆4500億円、為替の前提は1ドル156円20銭

次の2027年8月期についても、ファーストリテイリングは2026年10月に連結業績予想を出しました。売上収益は前期比12.3%増の4兆4500億円、事業利益は15.5%増の8300億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は3.2%増の5600億円を計画しています。年間配当は50円増やして900円にする予定で、為替は1ドル156円20銭を前提にしています。

国内ユニクロ事業は、既存店売上高で2%の増収を見込みながら、事業利益は前年並みにとどまる計画です。為替予約のレートが円安になるためで、原価率が上がる見通しは2026年8月期の決算説明の場で示されました。

ユニクロは2022年秋冬からフリースやジーンズを値上げ、ジーユーは据え置き

ユニクロが原材料や物流、為替を理由に価格を改めるのは、今回が初めてではありません。

2022年秋冬には、素材価格と輸送費の上昇に円安が加わり、フリースをはじめとする一部の定番商品が値上げされました。フリースの誕生から28年で初めての大幅な値上げで、1990円だったファーリーフリースが2990円へ、1500円だったヒートテック(極暖)が1990円へ上がりました。柳井正会長はこのときの決算会見で、円安による原料高のなかで価格を据え置くことはできないという趣旨を語りました。

2025年6月には、ウィメンズジーンズの価格も3990円から4990円へ改められたと報じられています。

同業他社の対応は分かれています。2022年秋冬、ジーユーは秋冬の主力商品について値段を変えないと発表しました。しまむらは同じ時期に秋冬商品の一部を値上げするとし、上げ幅は平均単価で3〜4%程度と見込んでいました。

撤回にはニュースのコメント欄で歓迎する声が目立ち、品質への批判も多い

ニュースのコメント欄には200件を超える書き込みがあり、撤回を喜ぶ声が目立つ一方、品質や企業の姿勢を問う意見も多く見られます。

歓迎する側で多くの共感を集めたのは、食料品も日用品も値上がりが続くなかで、毎日使う靴下の値段が据え置かれてありがたいという声です。家族の分を買ったり何足もまとめ買いしたりすると、小さな差額でも積み重なるという意見がありました。値上げの告知を見て買いだめしたという人や、まとめ買いが続くと知って安心したという人もいます。過去最高益が続く企業だからこそ、日々の消耗品は手頃な値段を守ってほしいという意見も出ています。

判断そのものを評価する声もあります。誰もが日常的に買う値段の象徴のような靴下を守ったのは賢い選択だ、という見方です。短期間で撤回した柔軟さを認めながら、発表する前にこの反応を読めなかったのかと問う意見や、残りの値上げをどこまで丁寧に説明できるかが今後の信頼を決めるという意見もありました。店の価格の印象を決める商品という小売の現場の考え方を引き合いに出し、ユニクロがはっきり靴下を必需品の象徴と言い切った点に目を向ける専門家の見解も寄せられています。

最も共感を集めた批判は、品質に関するものです。以前は丈夫で履き心地も良かったのに、最近は生地が薄くなり、1シーズンで穴があくという声が多く見られます。この品質で値上げは納得できない、撤回されても穴があくのは同じなので買わない、という意見もあります。反対に、スポーツタイプの靴下はまったく破れないという声や、何足かを順番に履いて長持ちさせているという声もありました。

他社と比べる意見としては、無印良品の3足組は肌ざわりが柔らかく暖かいという声や、別の通販サイトや量販店、コンビニで買った靴下のほうが長持ちするという書き込みが見られます。アウターや部屋着はユニクロ、靴下と下着は別の店と使い分けている人もいます。

撤回の背景については見方が割れています。批判が大きかったからだという意見、そもそも必要な値上げではなかったのではという疑問、話題づくりの戦略ではないかという見方があります。方針がぶれると何のための値上げだったのかと疑われるという指摘や、価格を据え置く商品は原材料や人件費が上がるなかで、品質を保つための費用がどこかで削られていないかと心配する声もありました。感動パンツや、ヒートテック以外のインナーなど、日常的に使う商品の値段も抑えてほしいという要望も出ています。

50色ソックスは税込290円のまま、ほかの値上げは11月10日から

ユニクロは50色ソックスを税込290円に据え置き、3点や4点で990円になるまとめ買いも続けることを決めました。感動ジャケットや感動パンツなどほかの商品は、2026年11月10日に予定どおり値上げされます。

ダウンやフリースなど、前の年の冬物でどの商品がいくら上がったかは2025年のユニクロ冬物の値上げ商品まとめで一覧にしています。今回の11月10日の値上げと並べると、ユニクロの価格改定の流れがつかみやすくなります。

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