カネボウは、高価格帯スキンケアの新作として、美容乳液「リプレニッシング チャームズ」と朝用クリーム「リペアリング エナジーズ」を2026年9月4日に発売します。美容乳液は税込1万5400円、朝用クリームは税込3万3000円(医薬部外品)で、いずれも同ブランドが掲げる”プログレスケア発想”シリーズの第2弾に位置づけられる商品です。2026年1月発売の美容化粧水「ジェネレイティング エッセンシャルズ」に続くラインアップで、胎脂に着想を得た複合保湿成分「TAISHI™ Micro-Lipo」を軸に据える点が特徴です。
背景にあるのは、国内で進む価格帯の二極化と、円安を受けたインバウンド需要の拡大、そして花王グループ全体の化粧品事業が2025年12月期に黒字転換した経営環境です。カネボウは花王が掲げる注力6ブランドの一角として、プレステージ領域でのマーケティング投資を集中的に受けています。この記事では、両アイテムの処方や価格、”プログレスケア発想”の狙い、市場環境、花王グループのアジア市場での動きまでを、公表情報にもとづいて整理していきます。

カネボウの新作は美容乳液1万5400円と朝用クリーム3万3000円で9月4日発売
カネボウ(KANEBO)は、”プログレスケア発想”のスキンケアシリーズ第2弾として、美容乳液「カネボウ リプレニッシング チャームズ」と朝用クリーム「カネボウ リペアリング エナジーズ」を2026年9月4日に発売します。価格帯は税込1万5400円から3万3000円で、カネボウのラインアップの中でも高価格帯に位置づけられる新作です。
美容乳液は本体110mLで1万5400円、リフィルは1万4850円
美容乳液「カネボウ リプレニッシング チャームズ」の価格は、本体110mLが税込1万5400円、リフィル110mLが税込1万4850円です。本体とリフィルの差額は550円で、詰め替えを継続的に選ぶことで容器分の費用を抑えられる設計になっています。朝用クリーム「カネボウ リペアリング エナジーズ」は本体50gが税込3万3000円、リフィル50gが税込3万1350円の医薬部外品として発売されます。乳液からクリームまでを揃えた場合、本体2品の合計は税込4万8400円で、カネボウのラインアップの中でも高価格帯に振り切った構成です。
2026年1月の美容化粧水に続く”プログレスケア発想”第2弾
“プログレスケア発想”シリーズの第1弾は、2026年1月に発売された美容化粧水「カネボウ ジェネレイティング エッセンシャルズ」(168mL 1万3200円、リフィル1万2650円)です。年齢を重ねることを”老化”ではなく、絶えず生まれ変わり続ける肌の”成長”ととらえ直す発想のもと、42日周期を意識したスキンケアを提案してきました。今回の美容乳液とクリームの投入で、シリーズは化粧水・乳液・クリームという基礎3ステップが揃うことになります。カネボウは2026年6月にもラインアップ拡充を発表しており、今回の新作はシリーズ全体を厚みのあるものにする一連の商品展開の延長線上に位置づけられます。
美容乳液「リプレニッシング チャームズ」は”笑顔の印象”に着目した設計
美容乳液「カネボウ リプレニッシング チャームズ」の開発の起点は、「ツヤ強度が高まることで、笑顔の印象も高まる」という研究知見です。加齢によるハリ不足や乾燥による小ジワなど、複合的な要因から生じるいわゆる”しぼみ肌印象”に向き合う設計になっています。表情そのものの印象、とくに笑顔の魅力を引き立てることを目指した設計思想が処方から読み取れます。
独自の「ボリュームフルフィリング技術」で張膜を形成
処方の核となるのが、ふっくらとした感触で肌を包み込む張膜を形成する独自の「ボリュームフルフィリング技術」です。肌へ注ぎ込むような浸透感を与えながら、とろけるようになじむテクスチャーで、みずみずしいうるおいを肌に閉じ込める設計となっています。処方面では、ヒアルロン酸研究から生まれた「メチルセリン」に加え、ワレモコウエキスとコメヌカエキスを組み合わせた保湿成分「リプレニッシングHAコンプレックス」を配合します。うるおいとハリのあるツヤ肌へ導くことを目的にした複合的な処方で、乳液単体でも仕上げの一歩まで担わせる設計思想がうかがえます。
胎脂由来のTAISHI™ Micro-Lipoが最大の特徴
もう一つの特徴が、複合保湿成分「TAISHI™ Micro-Lipo」の配合です。胎脂は、妊娠18週前後から胎児の肌表面を覆い始めるろう状・チーズ状の白い皮脂膜で、水分が約80%を占め、残りはセラミドや遊離脂肪酸、リン脂質、コレステロールといった脂質成分とタンパク質が約1割ずつを占めるとされます。子宮内では羊水による肌の”ふやけ”を防ぐ絶縁バリアとして働き、出生後は油膜を形成してうるおいを閉じ込め、乾燥や摩擦から守る保護膜として機能するとされる成分です。
カネボウはこの胎脂の複合的な機能に着想を得て「TAISHI™ Micro-Lipo」を開発しました。この成分は美容乳液単体ではなく、シリーズ全体を横断するキー成分として設計されており、化粧水から乳液、クリームまで一貫した世界観を打ち出すための技術資産として育てられています。新生児の肌が本来備えている”守る力”を大人の肌のスキンケアに応用しようとする発想は、カネボウの独自性を支える技術的な裏付けの一つです。
朝用クリーム「リペアリング エナジーズ」は医薬部外品として朝の肌に向き合う
もう一つの新作である「カネボウ リペアリング エナジーズ」は、朝の肌コンディションに焦点を当てた医薬部外品のクリームです。夜間に蓄積した乾燥やくすみといった、朝特有の肌の揺らぎに向き合うコンセプトで設計されており、ハリとうるおいに満ちた明るい肌印象へ導くことを目指します。
「タイトニングバンド技術」で密着ヴェールを作る処方
処方の核は、密着力・弾力・閉塞力を兼ね備えたヴェールを形成する「タイトニングバンド技術」です。肌につけた瞬間から密着してピンとしたハリをもたらし、うるおいを閉じ込める設計になっています。有効成分としては、美容乳液と共通する複合保湿成分「TAISHI™ Micro-Lipo」に加え、ビタミンC誘導体をはじめとする3種の有効成分を配合します。メラニンの生成抑制によりシミ・ソバカスを防ぐことを目的として設計されており、独自の複合保湿成分「リペアコンプレックス」により肌荒れへのアプローチも行います。
AM/PM使い分けというトレンドとの整合
朝用として設計されている点は、近年のスキンケア市場における「時間帯別ケア」「AM/PMケアの使い分け」というトレンドとも重なります。夜の集中ケアと違い、朝は身支度の時間的な制約が大きく、少ない工程でハリとうるおい、明るさという複数の効果を狙える処方は、時短志向と高機能志向を両立させたい層に向けた提案です。3万3000円という価格帯であっても、朝の1工程で密着感と即時的なハリ実感を得られる作り込みは、高価格帯商品ならではの付加価値として訴求しやすいポイントです。
香りはホワイトフローラルで、両アイテム共通の使用体験を作る
両アイテムはいずれも、シトラスとグリーンを基調にウッディを重ね、そこに茶葉「ティートピア」をアクセントとして加えたホワイトフローラルの香りで統一されています。機能面だけでなく、朝晩問わず心地よく使い続けられる香りの設計は、高価格帯ブランドならではの作り込みだといえます。シリーズ全体で香りを揃えることで、化粧水から乳液、クリームまでを重ね使いした際にも香りの分裂が起こらないよう配慮されている点も、シリーズ設計としての一貫性を裏づけます。
高価格帯スキンケア市場は2025年時点で全体の約4割を占める
今回のカネボウの新作は、国内スキンケア市場全体で進む「価格帯の二極化」というトレンドの中に位置づけられます。業界調査によれば、化粧品市場では高価格帯と低価格帯への需要の二極化が進んでおり、2025年時点で高価格帯が市場全体の約4割、中価格帯が約35%、低価格帯が約25%を占める見込みとされます。高価格帯市場は前年比5%以上の伸びを示していると報じられており、成長率でも中低価格帯を上回る動きです。
「メリハリ消費」と美容医療の浸透が需要を押し上げる
高価格帯の伸長を支えているのは、いわゆる「メリハリ消費」の傾向です。品質を重視する消費者が美容液など”スペシャルケア”アイテムに絞って高価格帯商品を選ぶ動きが強まっており、日常使いのベース品は中低価格帯、特別なケアは高価格帯という使い分けが定着しつつあります。また、美容医療が身近になったことで、消費者は「使ってすぐに変化を実感できるかどうか」をシビアに見極めるようになっており、独自技術や成分ストーリーを前面に押し出したブランドが有利になっている状況です。
カネボウの新作が「ボリュームフルフィリング技術」「タイトニングバンド技術」といった独自技術名や、胎脂由来のTAISHI™ Micro-Lipoを訴求の中心に置いているのは、こうした市場環境を踏まえた戦略とみられます。2025年以降は「失敗しない買い物」への志向がより強まっており、効果に定評のある定番のリニューアルや、そこから派生した新商品の投入が各社で活発化しているため、シリーズ全体の世界観を段階的に固めていくカネボウの手法は、この潮流に沿っています。
富士経済の市場調査ではスキンケア市場は1兆4624億円の見込み
富士経済の調査によれば、国内のスキンケア化粧品市場は2025年に1兆4624億円(2024年比3.5%増)となる見込みで、中でもパック、美容液、アイクリームなどのスポットケアを含む”スペシャルケア”向けの品目がいずれも前年比5%以上の伸びを示し、市場全体を牽引しているとされます。基礎化粧品を一つで済ませるのではなく、肌悩みごとに複数の商品を使い分ける消費者が増えていることの表れであり、カネボウのように化粧水・美容乳液・クリームを段階的にラインアップして使い分けさせる商品戦略とも合致する市場環境です。
円安とインバウンド需要が高価格帯スキンケアを押し上げている
高価格帯スキンケア市場の拡大を語るうえで欠かせないのが、円安を背景としたインバウンド需要です。2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆1395億円、1人当たりの消費額は約22.7万円に達し、いずれも円安や旅行スタイルの変化を背景に2019年比で大幅に増加しました。2025年上半期には、日本の化粧品市場における最も強力な成長エンジンの一つがこのインバウンド需要となっており、基礎化粧品市場は2019年同期比で110%まで回復・拡大しています。
中国からの訪日客をはじめとするアジアの消費者の間では、日本製品への信頼感の高さから「日本で正規品を直接購入したい」というニーズが根強く、円安と免税制度による価格メリットが後押しとなっています。近年はまとめ買い的な”爆買い”から、品質やブランド価値、独自性を重視して選ぶ「量から質」への消費スタイルへの転換が進んでおり、高価格帯スキンケアを「一生モノ」「自分へのご褒美」として選ぶ傾向が強まっています。カネボウのような高価格帯ブランドにとって、国内店頭需要とインバウンド需要の双方を同時に取り込める好機となっている状況です。
花王グループの化粧品事業は2025年12月期に黒字転換
カネボウを展開する花王グループにとっても、化粧品事業は業績改善を象徴する成長領域です。花王の2025年12月期連結決算は、売上高が前期比3.7%増の1兆6886億円、営業利益が同11.9%増の1640億円、純利益が同11.4%増の1200億円で、増収増益を達成しました。
化粧品事業の営業利益は前期37億円赤字から104億円黒字へ
とくに大きく動いたのが化粧品事業です。売上高は前期比7.2%増(実質6.9%増)の2616億円と大きく伸長し、営業利益についても104億円の黒字に転換しました(前期は37億円の赤字)。注力ブランドへの集中投資と固定費のスリム化が黒字転換に寄与したとされます。単年で141億円の営業利益改善が起きたことになり、化粧品事業は花王グループの業績を押し上げる原動力の一つになっています。
注力6ブランドは合計で前期比13%増
花王が注力6ブランドと位置づける「カネボウ(KANEBO)」「ソフィーナ(SOFINA)」「センサイ(SENSAI)」「モルトンブラウン(MOLTON BROWN)」「キュレル(CUREL)」「ケイト(KATE)」は、合計で前期比13%増と大きく伸びました。その中でも国内で好調が続くキュレルとカネボウに加え、新商品が伸長したソフィーナiP、インバウンド需要を捉えたセンサイなどが業績をけん引しました。カネボウは花王グループの高価格帯・プレステージ領域を担う中核ブランドの一つで、今回の”プログレスケア発想”シリーズ拡充も、花王の中期経営計画「K27」における高付加価値化とグローバル展開強化という方針に沿う動きです。
カネボウはアジア市場で急成長、タイでは前年同期比229%
カネボウの2025年グローバル売上は前年比14%増と大きく伸長しており、その牽引役となっているのがアジア市場です。とりわけタイ市場では過去最高売上を達成しています。カネボウはアジア市場において、複合的な肌悩みに応える高価格帯スキンケアへのニーズが高まっていると分析しており、今後アジア11の国・地域での新製品導入や、バンコクでのアジア合同イベント開催などを通じて、ブランドのプレゼンス向上を進める方針です。
バンコクでの体験イベントは約9000名規模で実施
タイでは2025年9月、バンコク中心部の商業施設「Parc Paragon」で新クリームの体験イベントを開催し、約9000名規模のサンプリングを実施しました。イベント期間となった9月1日から15日にかけて、タイ国内約60店舗の店頭売上は前年同期比229%まで上昇し、なかでもサイアム・パラゴン店の実績は前年同期比962%に達したと報じられています。カネボウはタイでは前年の2.5倍規模のマーケティング投資を行うなど、アジア市場を成長のけん引役として明確に位置づけています。
2027年までにアジア売上を2024年比1.6倍へ
カネボウは2027年までにアジアでの売上高を2024年比で約1.6倍に引き上げるという目標を掲げています。今回の美容乳液・クリームの発売も、国内市場での話題化に加え、アジア圏での高価格帯需要の取り込みを見据えた商品ラインアップ拡充の一環と位置づけられます。カネボウ ブランドマネジャーの木津裕美氏は、今後の展開についてアジア市場でのさらなるプレゼンス向上を図るとコメントしています。
カネボウは”生まれ変わり続ける肌”というポジティブな言い換えで差別化する
カネボウは近年、単なる”美しさ”の提供にとどまらず、「美ではなく、希望を発信する」というブランドパーパスを明確に打ち出し、「I HOPE.」というメッセージを軸にブランドコミュニケーションを展開してきました。かつて掲げていた「希望よ、超えてゆけ。」というメッセージも、年齢を重ねることや変化そのものを前向きに捉え直す価値観を反映したもので、今回の”プログレスケア発想”シリーズはこの延長線上にある取り組みです。
エイジングケアという言葉が「若さを保つ」「老化に抗う」というニュアンスを帯びやすいのに対し、カネボウは「生まれ変わり続ける肌」「成長」というポジティブな言い換えを軸に据えることで、年齢を重ねる過程そのものに価値を見出す新しいスキンケアの物語を提示しようとしています。今回の美容乳液が「笑顔の印象」に着目した点も、単なる見た目の若さではなく、表情や印象という内面的な要素まで含めて希望を発信するという、ブランドの一貫した姿勢の表れです。
花王は「グローバル・シャープトップ(GST)戦略」の中核ブランドとしてカネボウに投資を集中
花王は中期経営計画「K27」の中で、「グローバル・シャープトップ(GST)戦略」を掲げています。これは、マス市場でのシェア拡大を目指す従来型モデルから、独自技術を起点に対象市場を絞り込みながら、データを活用して価値を固定化していく収益モデルへの転換を意味します。化粧品事業においては、「センサイ」「モルトンブラウン」「キュレル」の3ブランドをグローバル展開のファーストランナーと位置づける一方、「カネボウ(KANEBO)」も国内外の注力6ブランドの一角として、マーケティング投資の集中先とされています。
黒を基調としたパッケージデザインから業界内で”黒カネボウ”と通称されるプレステージライン「KANEBO」は、幅広い年代・価格帯をカバーする「カネボウ化粧品」全体の中でも、グローバル展開を前提としたプレステージ(高価格帯)ラインという位置づけです。今回の美容乳液・クリームの発売は、花王のプレスリリースにおいて「グローバルプレステージブランド『KANEBO』」という表現とともに発表されており、国内向けの発表であると同時に、アジアをはじめとする海外市場への訴求も強く意識した商品設計になっています。
同じく注力ブランドに位置づけられる「センサイ(SENSAI)」は、欧州を中心に世界40カ国以上で展開するグローバルプレステージブランドとして、2023年に上海で旗艦店をオープンしたのに続き、2025年2月にはインドネシアへ初進出するなど、アジアでの店舗展開を加速させています。40年の歴史を持つ英国発のラグジュアリーフレグランスブランド「モルトンブラウン(MOLTON BROWN)」も、日本を含むアジアでホテルライクなライフスタイルを好む富裕層を対象に店舗展開を進めており、花王グループ全体としてアジアの富裕層・プレステージ市場を横断的に開拓する動きが強まっています。カネボウのタイでの積極的な投資も、この一環と位置づけられます。
まとめ:カネボウの高価格帯戦略が花王の成長エンジンとして定着するか
カネボウが2026年9月4日に発売する美容乳液「リプレニッシング チャームズ」(税込1万5400円)とクリーム「リペアリング エナジーズ」(税込3万3000円、医薬部外品)は、”プログレスケア発想”シリーズの第2弾として、2026年1月発売の美容化粧水に続く商品展開です。加齢によるハリ不足や乾燥による小ジワといった複合的な肌悩みに対し、「ボリュームフルフィリング技術」「タイトニングバンド技術」、胎脂由来の複合保湿成分「TAISHI™ Micro-Lipo」を軸に、うるおいとハリのある肌印象を目指す設計となっています。
背景には、国内スキンケア市場で進む価格帯の二極化と品質重視の「メリハリ消費」の拡大、美容医療の浸透にともなう即効性・機能性への消費者ニーズの高まりがあります。さらに、2025年に過去最高売上を記録したタイをはじめとするアジア市場での急成長、花王グループ全体における化粧品事業の増収増益と黒字転換という好調な業績を追い風に、カネボウは「I HOPE.」というブランドパーパスのもと、国内外で高価格帯スキンケアのプレゼンスを高めていく方針です。化粧水・美容乳液・クリームという基礎アイテムが出そろったことで、次にどのような新機軸を打ち出すのか、そして高価格帯という価格設定に見合う実感を消費者にどこまで届けられるかが、カネボウと花王グループの化粧品事業全体の成長を占う試金石になりそうです。









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