環境省、経済産業省、消費者庁は2026年8月6日、サステナブルファッション・パートナー制度を新設しました。衣服の生産から販売、着用、廃棄までの各段階で環境負荷を減らすため、企業や団体が官民学で連携する新しい枠組みです。会員の募集は2026年9月3日(木)までで、参加できるのは企業やNPOなどの団体、自治体、学校です。個人での参加は想定されていません。
これまでもリユースボックスの設置や環境配慮素材を使った商品開発など、個社単位でのサステナブルファッションの取り組みは広がってきました。ただ、業界全体としての連携までは進んでいなかったのが実情です。この記事では、制度の中身と募集の条件、そして制度が生まれた背景にある衣類廃棄の現状や海外の規制動向まで、事業者の立場から知っておきたい情報を整理します。

サステナブルファッション・パートナー制度は3省庁の連携で発足
サステナブルファッション・パートナー制度は、環境省が事務局を務め、経済産業省と消費者庁が協力する形で運営されます。窓口は環境省の環境再生・資源循環局資源循環課と、同省の「ファッションと環境」タスクフォースが担当し、経済産業省側は製造産業局生活製品課、消費者庁側は消費者教育推進課がそれぞれ関わります。
サステナブルファッションという言葉は、環境省の定義では「衣服の生産から販売、着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組み」を指します。服を買うときの選択だけでなく、着用中の手入れや、手放すときのリユース・リサイクルまで含めた考え方です。
制度の目的は、個社ごとに完結しがちだった取り組みを、業界横断の連携につなげることにあります。リユース、リペア、リサイクルはそれぞれ別の事業者が担うことが多く、これまでは横のつながりが弱いという課題がありました。パートナー制度は、こうした異なる取り組みをつなぐ場として設計されています。
会員募集は2026年9月3日(木)まで、対象は企業・団体・自治体・学校
パートナーとして参加できるのは、企業、NPOなどの団体、自治体、学校です。個人の会員としての参加は想定されていません。参加を希望する場合は「サステナブルファッション・パートナー 新規登録受付申請フォーム」に必要事項を記入し、参加申込先のメールアドレスまで必要書類を提出します。
提出が求められる内容は3点です。1つ目は衣服の企画、生産、販売、着用、回収、廃棄といった各場面でのサステナブルファッションに向けた取り組みの概要、2つ目はその取り組みをどう周知・発信していくかという計画、3つ目は設立年月日や法人名、所在地、申請者の連絡先、事業内容といった団体の概要です。参加後は、原則として1年ごとに取り組みの結果を事務局へ簡易報告することになっています。単発の登録で終わる制度ではなく、継続的な情報開示が前提になっている点は申請前に押さえておく必要があります。
提出内容に不備がなければ、事務局からサステナブルファッション・キャンペーンの総会への招待状が届きます。募集は9月3日で締め切られるわけではなく、その後も随時受け付ける方針が示されています。今回の期限に間に合わなくても、参加の機会は今後も続く見込みです。参加申込先は環境省サステナブルファッション担当(fashion@env.go.jp)です。報道では制度の施行時期を2026年10月1日とする情報もあり、9月の募集を経て10月から本格運用に入る流れになりそうです。
衣類の廃棄量は年間約46万トン、政府は2030年までに25%削減を目標に
パートナー制度が新設された背景には、衣類の廃棄をめぐる数字の重さがあります。環境省の調査によると、家庭などから手放された衣類のうち、リユースやリサイクルに回らずに焼却や埋め立てで処分される量は年間で約46万トンにのぼります。
手放された衣類全体の処理内訳を見ると、廃棄が計47.0万トンで全体の64.3%、リサイクルが計12.7万トンで17.4%、リユースが計13.3万トンで18.1%という構成です。再利用や再資源化に回る割合は、合わせても4割に届いていません。政府はこの状況を変えるため、家庭から廃棄される衣類の量を2030年までに2020年度比で25%削減するという目標を掲げています。
| 手放された衣類の行き先 | 数量 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 廃棄(焼却・埋め立て等) | 47.0万トン | 64.3% |
| リサイクル | 12.7万トン | 17.4% |
| リユース | 13.3万トン | 18.1% |
この目標を個々の企業や自治体だけで達成するのは簡単ではありません。リユース・リペア・リサイクルという異なる工程を担う事業者同士が情報をつなぎ、社会全体で衣服の循環を後押しする仕組みが必要だという判断が、パートナー制度創設の土台にあると考えられます。
パートナー制度の活動は情報交換・消費者啓発・事例発信の3本柱
事務局が予定している活動は、大きく3つに分かれます。1つ目は、衣服の企画から生産、販売、着用、回収、廃棄までの各場面における企業間の情報交換と、参加会員同士の連携促進です。定期的な総会も開かれる予定で、業界内の異なるプレイヤー同士が顔を合わせる機会になります。
2つ目は、消費者に向けた意識醸成のためのイベントやキャンペーン、マーケティングやプロモーションの企画・実施です。パートナー制度は企業間の連携だけでなく、生活者への働きかけも重要な柱として位置づけています。3つ目は、サステナブルファッションに関する記事の作成・公表です。参加企業の取り組みを事務局側から発信することで、単独では届きにくい層にも情報を届けようという狙いがあります。
サステナブルファッション・キャンペーンは「衣替えでクローゼットから循環を」がコンセプト
パートナー制度は、3省庁がすでに実施しているサステナブルファッション・キャンペーンと一体で運用されます。キャンペーンのコンセプトは「『衣替え』でクローゼットから循環をはじめよう」です。季節の変わり目という生活習慣に合わせて、衣服との関わり方を見直すきっかけを作ろうとしています。
促したい行動は3つの方向に整理されています。1つ目は、今ある衣類を点検し、手入れをしながら長く着続けることです。古びたと感じた服でも、直しや修理で新しい魅力に気づけるという視点が示されています。2つ目は、もう着ない服はリユースへ、もう着られない服はリサイクルへ回すことです。自分には不要でも別の誰かには新鮮に映るかもしれないという考え方で、リユースを楽しむ姿勢が呼びかけられています。3つ目は、生産地や品質、デザインを吟味して「価値ある一着」を選ぶことです。買い物のときにタグや素材、生産過程まで意識するという提案も含まれています。
このキャンペーンでは、2026年7月12日を締め切りとしてロゴマークとキャッチコピーの公募も行われました。プロ・アマを問わず日本国内在住者から広く募集し、ロゴマークとキャッチコピーそれぞれの部門で最優秀賞1点と優秀賞2点を選定する内容でした。選ばれた作品は今後のキャンペーンで継続的に使われる見込みです。パートナー制度の発足は、このロゴマーク・キャッチコピー選定と時期的に連続しており、キャンペーンの土台が固まったタイミングで企業を巻き込む実行部隊が立ち上がった形になります。
「ファッションと環境」タスクフォースは2020年発足、5年越しの積み重ね
パートナー制度の事務局側を担う「ファッションと環境」タスクフォースは、今回新しく作られた組織ではありません。2020年9月に発足した組織で、同年8月に当時の環境大臣だった小泉進次郎氏とファッション業界との意見交換会が行われたことがきっかけになっています。背景には、ファッション産業が大量生産・大量消費・大量廃棄というモデルに依存してきたことへの懸念がありました。
発足後の2020年12月から2021年2月にかけて、タスクフォースは計4回の勉強会を開いています。参加企業からは、廃棄される衣類を回収する仕組みづくりや、環境配慮素材の開発を後押しする資金支援を伴う共同プラットフォームの構築、全国規模での消費者向けキャンペーンの実施など、官民連携への要望が寄せられたとされています。タスクフォースのメンバーは、通常業務以外の環境政策活動に勤務時間の最大20%を充てられる、霞が関の試行的な仕組みを通じて集められたとも伝えられています。今回のパートナー制度は、こうした約5年にわたる勉強会とキャンペーンの積み重ねの延長線上に生まれたものといえます。
経済産業省はリユース・リサイクル率35%、繊維to繊維1%未満の課題に対応
パートナー制度に経済産業省が協力機関として名を連ねている背景には、同省製造産業局生活製品課が独自に進めてきた繊維産業向けの政策があります。経済産業省は、繊維関連企業が海外市場での競争力を保つにはサステナビリティへの対応が欠かせないという立場から、2030年に向けた政策を検討してきました。その成果として「繊維製品の環境配慮設計ガイドライン」と「繊維・アパレル産業における環境配慮情報開示ガイドライン」を策定しています。
背景にあるのは厳しい数字です。国内における衣料品のリユース・リサイクル率は約35%にとどまり、繊維を繊維として再生する「繊維to繊維リサイクル」に限れば1%にも届いていません。この状況を受けて、経済産業省は2023年1月に「繊維製品の資源循環システム検討会」を立ち上げ、課題整理と方向性の検討を進めてきました。2024年3月には、衣服のライフサイクル各段階で事業者が取り組むべき環境配慮設計の項目や評価基準も定めています。環境省が生活者への啓発と企業連携を担い、経済産業省が規格やガイドラインの整備を担うという役割分担で、パートナー制度は両者の政策をつなぐ位置にあります。
消費者庁はエシカル消費の観点から中高生向け教材も展開
3省庁のうち消費者庁が担うのは、エシカル消費の普及啓発という角度からのアプローチです。同庁消費者教育推進課は、自分のことだけでなく環境や社会、地域といった様々な立場を考えた消費行動を指す「エシカル消費」の考え方を広めるため、イベントへの参画・支援や教材の教育機関への普及に取り組んできました。サステナブルファッションについても、このエシカル消費の一環として位置づけており、中高生向けにサステナブルファッションの習慣化を促す教材を作成するなど、若い世代への消費者教育にも力を入れています。パートナー制度における消費者庁の協力は、これまで積み上げてきた消費者教育の蓄積と、企業側の取り組みを結びつける役割を担うものといえそうです。同庁の消費者意識調査でも、衣服を選ぶときは価格やデザインを重視する一方、環境や人・社会に配慮した素材かどうか、リサイクルしやすいかどうかを考慮する人はまだ少ないという傾向が出ています。関心と実際の購買行動のあいだにあるこのずれを埋めていくことも、消費者庁が担う役割の一つといえます。
パートナー制度に参加する際には、環境省が推進する国民運動「デコ活応援団」にも合わせて加入できます。デコ活は、二酸化炭素排出量の削減を意味する「デコ」と「エコ」を組み合わせた造語で、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて生活者の行動変容を後押しする取り組みです。国や自治体、企業、消費者など多様な主体が参加し、暮らし方の提案や事例共有、施策への提案・要望などを行っています。衣服の分野に限らない脱炭素型ライフスタイルの取り組みとサステナブルファッションを結びつけることで、相乗効果を狙った仕組みといえます。
EUは2026年7月19日から大企業の売れ残り廃棄を禁止
日本でパートナー制度が新設された背景には、繊維製品をめぐる国際的な規制強化の流れもあります。EUでは、売れ残った消費者向け繊維製品の廃棄を禁止する規則が段階的に導入されており、大企業に対しては2026年7月19日から適用が始まりました。中堅企業は2030年からの適用となる見込みです。対象は衣類やアクセサリーだけでなく、毛布、寝具、カーテン、帽子、履物、マットレス、カーペットなど幅広い繊維製品に及びます。売れ残りや返品品については、廃棄ではなく再販や再製造、寄付、再利用といった選択肢の検討が義務づけられ、廃棄した売れ残り製品のデータ開示も求められます。
EUではさらに、2025年1月1日以降、域内で繊維製品を販売する生産者に対して、収集・選別・リサイクルの費用を負担させる拡大生産者責任(EPR)制度の導入も進んでいます。2026年には繊維製品を対象に含むエコデザイン規則(ESPR)関連の委任法が公表される見通しで、発効はその18か月後とされています。フランスなど一部の加盟国では、これに先立って衣類の廃棄を禁止する法律がすでに施行されている例もあります。こうした海外の流れと比べると、日本のパートナー制度は罰則を伴う規制ではなく、企業・団体の自発的な参加を促す枠組みとして設計されている点が特徴です。海外で規制強化が進めば、日本でも将来的に規制的な手法が議論される可能性はあり、早い段階で連携体制を築いておくことは企業にとって将来への備えにもなりそうです。
環境省が紹介する好事例はリペアやシェアリングサービス
パートナー制度に参加した企業がどのような取り組みを行うことになるのか、環境省が特設サイトで紹介している好事例が参考になります。洋服のお直しサービスを通じて「簡単に捨てない」「むやみに新しい物を買わない」という消費行動を後押しする取り組みや、丁寧なものづくりで衣類そのものの寿命を延ばす取り組みが紹介されています。リペアを通じて顧客との接点を増やし、修理を切り口に新しい価値を生み出している事例や、海洋環境への影響が懸念されるマイクロプラスチックの排出を減らす取り組みもあります。
季節ごとのセールを前提とした商品企画をあえて行わず、商品サイクルを長期化させる取り組みや、消費者が新たに服を買う機会を抑えつつ、レンタルやシェアリングサービスを通じて服との新しい出会いを提供する取り組みも紹介されています。これらは、パートナー制度が想定する「衣服の企画、生産、販売、着用、回収、廃棄等の各場面における取り組み」の具体例にあたるもので、これから申請を検討する企業にとっては、自社の取り組みを書類にどう落とし込むかを考える手がかりになりそうです。
参加企業には総会でのネットワーキングと発信の機会
パートナー制度に参加する企業や団体には、いくつかの実利があると考えられます。まず、定期的な総会が予定されているため、単発の商談やイベントでは得にくい継続的なネットワーキングの場を持てます。次に、事務局が実施する消費者向けイベントやプロモーション企画に関われる可能性があります。自社単独では難しい規模の啓発活動に、官民連携の枠組みを通じて参加できる点は魅力です。さらに、事務局が作成・公表する記事を通じて自社の取り組みが発信される機会も見込めます。行政が関わる制度からの発信は、消費者や取引先からの信頼にもつながりやすいはずです。
一方で、参加には取り組み概要や周知発信計画、団体概要の提出に加え、年1回の結果報告が求められます。継続的な取り組みと情報開示が前提の制度なので、申請を検討する際は自社のサステナビリティ施策を中長期的にどう位置づけるかを考えておくことが望ましいでしょう。
申請の窓口は環境省サステナブルファッション担当
制度への参加を検討する場合の窓口情報をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 募集期限 | 2026年9月3日(木)まで(その後も随時募集予定) |
| 参加申込先 | 環境省サステナブルファッション担当(fashion@env.go.jp) |
| 所在地 | 東京都千代田区霞が関1-2-2(〒100-8975) |
| 対象 | 企業、NPO等の団体、自治体、学校(個人不可) |
| 提出書類 | 取り組み概要、周知発信計画、団体概要 |
申請にあたっては「サステナブルファッション・パートナー制度実施要綱」や登録受付申請フォームといった関連資料が環境省の報道発表資料ページで公開されています。これらを確認したうえで、必要事項を記載したフォームと必要書類をメールで提出するという流れになります。
サステナブルファッション・パートナー制度は、9月3日を第一次の期限としつつ、その後も継続的に会員を受け付けていく方針です。リユース・リペア・リサイクルという別々の取り組みが、業界横断で連携していくかどうかは、これから参加する企業や団体の数と、総会や消費者向けイベントで生まれる具体的な成果によって決まってきそうです。
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